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◇第7回オープンセミナー備忘録
2017年5月22日
第7回磯貝製作所オープンセミナー備忘録
日 時:2017年5月13日(木)18:30~
講話者:堀内明日香氏(元宝塚宙組 華凛もゆる)
テーマ:「宝塚100年の歴史から学ぶ人材育成と組織づくりの本質」
~人が輝き組織が活きる心と身体の磨き方~」
場 所:磯貝製作所(愛知県碧南市)
講師紹介:堀内明日香(華凛もゆる) 北海道出身
宝塚音楽学校第87期生 2009年宝塚歌劇団退団
現在は宝塚で得た厳しくかつ貴重な経験を活かし、
退団後学んだドラッカーのマネジメントを取り入れ、
各地で講演活動を行っている。
まずは ♪ オペラ座の怪人~Think of me~ を透き通る声で歌いながら登場されました。
①宝塚は全体で1つの作品を作り上げるプロ集団。個性のスキル(個人の技量)を重視するのではなく、組織として全員が同じベクトルを向くために「コミュニケーション」を徹底的に重視してきた。100年続く宝塚の組織繁栄のためには、会社のスキル・技術を磨くだけでなく、「人格を磨かなければならない」こと。
②宝塚創設者:小林一三氏。日本で初めてターミナルビルを開発。阪急グループ創業。松岡修造氏の曽祖父。修造氏の娘は今春宝塚入学。 ドラッガーのマネジメントの本に「宝塚歌劇団、小林一三」の話が書いてあった。宝塚にいた身として、ドラッガーのマネジメントと宝塚の教育が似ていると感じた。
③エンターテイメント顧客満足度調査でディズニー、劇団四季を抑え、宝塚は1位。100年たっても変わらず受け入れられるために大切にしているものは何か。 ドラッガーの言う「経営者は事業は外向き、組織は内向きに見るべき」大舞台に立つのは成績順。人気順。しかし一歩舞台を降りたら「年功序列」が優先される世界。成果主義だけでは続かない。組織の中には日本人の秩序の美しさ、良さがある。 若くしてTOPになっても、組織としては、上の人に対して心づかいのできる人でなければ、 本当に輝く人にはなれない。
★5つのキーワード
★【ゴールが明確】その意味とゴールを教える
小学5年で東京で見た宝塚に感動した。主役以外の隅に居る人までが輝いていた。それを観て宝塚入団を目指した。人生を歩むうえで目標を定めることが大切。
宝塚の入学試験は 歌・バレエ・面接。その中での面接は7~10秒で決まる。条件は同じ、ノーメイク、黒のレオタード、お団子頭。見た目は全員同じで行う。内容は「受験番号・年齢・出身地・身長・体重・受験回数」を読み上げるのみ。同じ条件下で、人よりも表現よく輝き、しかも素直さがあるかが重視される。
事業が発展していくために、素直さがある人が成長していく。天狗は嫌われる。「我」が強い人は成長できない。技術・スキルではなく素直さが大切。
小林一三氏:いかに優秀な技能を有する人も、信用がなければ成功はおぼつかない。
正直と礼儀を知る=真摯さ
「真摯さ」とは、自分の子をその下で働かせたいと思うかどうか問うてみるとよくわかる。
★【身体から入る】型を重視する。日本人の型。
宝塚の予科(1年生)の生活の様子をビデオで見せていただく。すさまじい上下関係で規律正しい生活を送る様子。正直運動系の部活動のような感じだと思った。
先生は10年在籍して一番楽しい時期だったと振り返る。2年ごとに試験があり、成績順で配役が決まる。毎年40名の新入生がいて、いつ後輩に抜かれていくかという緊張感。 入学式からすでに作品。チームワークで作品を作るためには、自分「我」を出していたらダメ、成長しない。まずは個性は置いておいて、技術、スキル、「理念」を体に叩き込んでいく。袖から出るシャツの長さ、靴下の長さ、リボンの長さもみんなで決める。そろっていると「美しい」。自分が目指していることに対して、どれだけ拘れるかが本当のプロ。 同期の信頼関係。
お互いに注意しあうシステムがある。「型に心が出る」。挨拶は年下から。年上から挨拶をしたら、その世界では生き残れない。気に入られない人は問題。反省事があると「ご指導」される。予科生はご注意されたら「ありがとうございます」「すみませんでした」の2言のみ。言い訳しないルール。ご注意されたことは同期に伝える。危機管理の共有。一つ上の先輩はそれを確認してくれるシステムがある。・・同じメンバーで同じミスが起こらない。同期での気づきあい。ひとつ上の先輩のフォロー。そういう関係が大切。
18歳で社会に出た9割の人が言い訳から入ると言われている。宝塚では常に自責でとらえなければ成長しないことを学んだ。 下級生が廊下の隅を歩くのは・・下級生が堂々と真ん中を歩いていると美しくない。謙虚に隅を歩くことで、先輩に道を譲る心を学ぶ。美しい。
ゴミキーパー制(目線を下げて先輩のゴミを頂いて捨てさせていただく)心配り。後輩が先輩のお手伝いさせていただくことで、たくさんの気づきを得る。 講演千秋楽前にはお手紙(カード)で感謝の意を伝える。形に表すこと。 ここまですることで、チームに絆が生まれる。自分の失敗はチームの失敗。自分のミスを謝るときはチームで謝ってくれる。 絆とは、他人のきずをなめてくれる仲間。日ごろの助け合いこそが「絆」信頼が生まれる。 日本の昔からの型を重視する。宝塚にも「報連相」の仕組みがある。 素直に謝れる人は、周囲に助けてもらえる。
厳しいことに向かっていけるモチベーションは、輝ける舞台(ゴール)があるから。
2年目以降、下級生の指導も、1年目ですべてを叩き込まれているので、新入社員教育ができる。1対1での下級生指導が行える。きめ細かく、持ち場を決めることで、責任が明確になる。モノの故障や紛失がわかる。責任感が強くなる。変化やミスにすぐ気がつけるシステムがある。
ドラッガー:真摯さに欠ける者は組織を破壊する。組織にとって最も重要な資源である人を破壊する。組織の精神を損なう。成果を損なう。
★【風通しの良さ】情報共有はニュアンスまで全員が共有する。
ミスをしたときには、ご指導を受け、一つ上の先輩へ報告する。その先輩はもう一つ上の先輩へ伝達し、順番に上級生に伝達され、全員で共有する。またご指導した上級生は、指導内容が正しく伝わってきたかを確認する。間違って伝わってくれば再度ご指導する。間違っていれば修正される。正しく伝達される。情報が必ず上まで伝わる。上司が知らなかったということがない。 ご指導受けた時には、翌日に修正できたかお伺いをする。出来ていなければまた翌日にお伺いをし、修正できるまで行う。指導がやりっぱなしにはならない。問題修正は完結するまで面倒を見る。
★【お手本の力】
卒業して芸能で第一線で活躍されている有名人のOGでも、公演の際は、差し入れや感想(指導)をしていただける存在。
宝塚には「ブス(無作法)の25箇条チェックリスト」がある。 1.笑顔がない 2.お礼を言わない 3.おいしいと言わない 4.目が輝いていない 5.精気がない 6.いつも口がへの字をしている・・・・・等々、人間性を高めるために自分を振り返る項目が並んでいる。 先生の経験で、挫折、逆境に立ち向かった時、それから逃げるのではなく、まずは受け入れて、できることをやっていくことで道が開けていった。
高校野球チームへの講演会をやって気づいたこと。監督の想いと同じ。野球(技術)だけを磨くのではなく、人としてのスキルを育てたい。上下関係を磨いていく。とにかく反復して体に覚えさせていく。絆を、信頼を気づいていく。日本のこころ:助け合う文化。 嫌なことがあるとモチベーションが下がるが、試されている時と捉える。
当たり前のことも怠らない。他人が他人をコントロールはできない。自分の心の持ち方が大切。プロだからこそお手本とされる意識。
会社でも、①技術スキルを上げること ②仕事を通してどのように成長したいか。この2点でモチベーション高く成長できる。 あの人のようになりたい。あの社長のようになりたい。あの人に近づきたいというお手本。
★【やり方よりあり方】・・人の成長を決める
ドラッガー:組織の精神はトップで形成される。組織が偉大たりうるのは、トップが偉大な時だけである。組織が腐るのは、トップが腐るからである。
他人が見ているのは「あり方」。最近の事例:浅田真央選手。金メダルが取れなくても、人としての在り方としては世界中から愛されている。
④日本人としての型 思いやりの気持ちを持って、相手や周囲に対して自然に形に表すこと 宝塚の先輩から受け継いだものは日本人としての心の在り方。日本人のDNAに刷り込まれたもの。型が整えば精神の美しさも所作の美しさも自然とついてくる。そして人生が輝く。
¶ まとめ ¶ ・大切なのは素直さである ・感謝の気持ちを言葉や行動にあらわす ・足元からできることをやっていく ・継続性が不可欠、短期で手に入るものに素晴らしいものなどない ・やり方より在り方が人の成長を決める
講演会後、感想のシェア会を行いました。業種、立場も様々な方々が多数参加していただきました。宝塚の教育体系は体育会系だと感じましたが、昔の日本の仕組みはこうではなかったかと感じました。技術伝承と共に、人間性も良き先輩から伝承されていたように思う。しかし今の世の中、成果第一で人としてのスキル(人間性)がおろそかになっていると感じました。宝塚は全く知らなかった世界でしたが、こういうマネジメントが継承されているが故に伝統が守られ、継続する組織になっている。 一番の共感は「やり方より在り方」。人としての在り方を大切にしていきたいと思いました